川上マユミは 陶芸の象嵌に魅了されて 象嵌をテーマにした作品づくりをライフワークにしています。
象嵌(ぞうがん)の工程について
線彫り や、印花文をした中に、素地色と異なる泥を埋めて装飾する技法です。
本体となる土台が乾かないうちに模様を彫り、彫った部分に(柄となる)異なる土を埋めてから、はみ出した余分な土を削って模様を出します。
象嵌をすることによって、絵の具で描いたような〖ぼやけ〗がないため、輪郭がくっきりとした、版画のような表現ができます。表面的な描画と違って、大変手間のかかる技法ですが、それだけに深みのある風合いが生まれます。
一人で抱えられるサイズまでは、順調に進んでいた作業も、一人では到底抱えきれないほどのサイズのオブジェなどは、工程に工夫が必要となります。それは、象嵌は乾燥しきってしまう前に、柄になるすべての土を埋めないとならないからです。本体の作成にはどんなに急いでも1か月以上はかかり、象嵌しているその間にも乾燥は進んでいきます。
濡らしたさらしを巻き、ビニールをかぶせて象嵌が終わるまでの数か月を、生乾きの土の状態でしのぎます。
ビニールについた水滴に気を配り、隣り合う土と混ざらないように注意を払います。
また、面積を広く埋めるので、収縮率の違いを考えて土を調合します。
象嵌の作業中も気の抜けない根気のいる作業ですが、完成した魅力的な風合いと、達成感は何事にもかえられないものがあります。
やればやるだけ、奥が深く
完成するたびに乗り越えたいと思う壁が次々に生まれ、尽きることはありません。
工程
土台の土に、象嵌する土を混ぜます。
(土の収縮率の違いによる隙間を防ぐため)
<配合>
赤土、黒土、信楽、古信楽 など‥ +シャモット(耐火煉瓦の粉)
巻いているのは、濡らしたさらし。
(巻き終わりを中から外側に巻き込むと、落ちない)
ビニールは、二重にすることもあります。
下絵を写します。
慣れてきても、必ず写します。
本体の中に落ちる水滴をビニールと手ぬぐいで防いでいます。
柄を彫り、柄になる土を埋めます。
少し多めにのせて、途中で何度か押します。
埋め終わりです。
これから、ゆっくり乾燥させます。
象嵌した土と、本体の土が同じ硬さになったら削ります。
すべて削ったら、半年くらいかけてゆっくりと乾燥させて素焼きします。
素焼き後、釉薬を(内側だけ)かけて本焼きします。
メドウセイジ
第52回女流陶芸展 入選 2018
この作品は、黒と白部分を象嵌。
葉は地色です。
からまる葉を、表現しました。
トケイソウ象嵌
日本現代工芸美術展 2016入選